Japan Reiwa Era Emperor Naruhito and Empress Masako 032

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大阪市天王寺区のシェラトン都ホテル大阪で6月30日、大阪「正論」懇話会の第59回講演会が行われ、旧皇族の竹田家出身で明治天皇の玄孫(やしゃご)にあたる作家、竹田恒泰(つねやす)氏が「天皇と日本」と題して講演した。講演内容の要旨は次の通り。

 

大阪「正論」懇話会で講演する作家の竹田恒泰氏=30日、大阪市天王寺区のシェラトン都ホテル大阪(南雲都撮影)

 

世界の政治経済が混沌(こんとん)とする中で新型コロナウイルスにまみえ、私たちは先行きの見えない時代を生きている。しかしながら、歴史を振り返れば日本も疫病と無関係ではなく、日本人は今よりももっと困難な状況に立ち向かっていた。例えば、疫病に多くの人が苦しんだ奈良時代、聖武天皇は国が鎮まるようにと世界最大の大仏を作った。また、疫病によって平安遷都が決まり、京の都が栄えた。日本では疫病によってさまざまな文化が創造され、現代に残されてきた。令和の時代に新しい文化が生まれるとすれば、それは東京五輪かもしれない。日本が改めて注目されるきっかけになると期待している。

 

今年、安定的な皇位継承策をめぐり、菅義偉(すが・よしひで)内閣が有識者会議を立ち上げた。その背景には、上皇陛下の譲位のご意向を受け、平成29年に成立した譲位特例法の付帯決議がある。この付帯決議に、野党の求めで女性宮家の創設などを検討することが盛り込まれた。

 

天皇は政治の中身を決める権能を持たないが、内閣総理大臣の任命や法律の公布など国事行為により、あらゆる国家権力の源泉は天皇に帰結する。わが国は、統治の中枢に万世一系の天皇を仰いできた。その御地位に、疑問が差し挟まれる余地があってはならない。だからこそ当時の安倍晋三政権は、譲位特例法について野党にも説得を重ね、ほぼ全ての政党の賛成で成立させた。そして菅政権の有識者会議で、女性宮家の創設などの検討が始まった。

 

しかし女性天皇容認や、女性宮家創設は、女系天皇の入り口になる大変危険な議論だ。男女平等の時代だからと、女性天皇や女系天皇を認めようということを主張しているのは、日本共産党だ。1代限りで女性天皇を認めたとして、今の時代、結婚を禁止できない。もし男の子が生まれたら、継承議論が起きるのは必至だ。

 

また、女性宮家創設は、女性皇族と結婚する民間男性を皇族にするということで、その息子が将来天皇になる可能性がある。もし女系天皇を認め、男系の血筋をひかない天皇が即位すれば「血統が途切れたのなら、もはや皇室は滅びた」と、天皇を認めない者が出るだろう。

 

 

憲法は、「天皇は、日本国の象徴であり日本国民統合の象徴であって、この地位は、主権の存する日本国民の総意に基づく」と定めている。このため、天皇の御地位について国民の意見が分かれることが問題になってくる。男系継承の伝統を守れば、そのような問題は起きない。

 

かつて伊勢神宮の式年遷宮に用いる木材が不足したとき、明治天皇は、建築様式を変えたいとの上奏に対し、「伝統を変えることを議論する前に、伝統を守る方法を考えなさい」とおっしゃった。今の議論に置き換えれば、男系男子が少なくなったからと皇位継承のルールを変えるのではなく、男系男子を確保する方法を考えろということになるだろう。考えられるのは、旧皇族の復帰と、旧皇族から養子をとる方法がある。できるだけ早いうちに既存の宮家を存続させる方策をとるべきだ。

 

歴代天皇は国民をわが子のように愛し、国民は皇室を支え、国を支えてきた。天皇と国民の縁がしっかりと保たれれば、わが国はどんな時代を迎えても必ず乗り越えていける。

 

 

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